SDGs実践から見えるコンサルファームの企業文化とは?ー制度と行動から読み解く転職先の選び方

SDGs実践から見えるコンサルファームの企業文化とは?ー制度と行動から読み解く転職先の選び方

1. はじめに──SDGsは“掲げる”だけでは伝わらない。企業文化で選ぶコンサル転職

近年、企業や行政がSDGs(持続可能な開発目標)への対応を本格化する中で、これらの実装支援を行う「コンサルタント」の役割が注目を集めています。特にコンサルティングファームでは、クライアントへの支援にとどまらず、自社内でも多様なSDGs活動を展開しており、その姿勢は採用方針や企業文化にも色濃く反映されています。

本記事では、主要ファームのSDGs取り組み事例やその背景、求められる人材像までを整理し、転職希望者が「どのような会社でSDGsに関わるか」を選ぶ際の視点を提供します。

2. SDGsへの取り組みが求められる背景とコンサル業界の役割

2.1 支援だけでなく、自社も「実践する主体」になる時代へ

コンサルティングファームは、企業や自治体のSDGs導入やサステナビリティ戦略を支援する立場にあります。だからこそ、自社がSDGsにどう取り組んでいるかは、その専門性や信頼性を支える基盤のひとつと見なされるようになっています。

近年では、多くのファームが、プロボノ制度の整備やダイバーシティの推進、気候変動への対応、非営利セクターとの連携といった取り組みを通じて、社会課題と向き合う姿勢を社内外に発信しています。クライアントの変革を支援する立場にあるからこそ、自らも実践する主体であることが問われているのです。

2.2 理念は掲げやすく、制度化・行動変容こそが本質

「SDGsに取り組む」と表明する企業は増えていますが、その中身には大きな差があります。理念を掲げるだけではなく、制度として組み込み、社員の行動にまで根づいているかが、実質的な取り組みかどうかを見極めるポイントです。

たとえば、プロボノ支援やサステナブル経営に関する研修制度があっても、社員が自由に参加できなかったり、業務として評価されなかったりすれば、それは実質的に機能しているとは言えません。制度が存在するか、制度が運用されているか、制度が文化になっているか――このような視点で、企業のSDGs実践を立体的に捉えることが求められています。

2.3 「どの会社でSDGsに向き合うか」を見極める視点とは?

こうした背景のもとで、SDGsに関心を持つ転職希望者にとっては、「この会社は何をどう実践しているのか」を知ることが、キャリア選択における大切な軸のひとつになります。SDGsを掲げる企業は多くても、そこに制度と行動の裏付けがあるかは別問題です。

特にコンサルティングファームでは、支援者であると同時に実践者であることが期待されており、その姿勢は企業文化や働き方、採用方針にも色濃く反映されています。自社でのSDGs実践に本気で取り組んでいるかどうかは、働く環境の透明性、評価のされ方、自己成長の方向性と直結しており、企業を選ぶ際に見落とせない視点と言えるでしょう。

3. 理念にとどまらないSDGs実践──制度として可視化されているか

3.1 PwC Japanの戦略的プロボノと人材育成制度

PwCコンサルティング合同会社(PwC Japan)は、クライアント支援にとどまらず、自社でも社会課題解決に主体的に関与する文化を構築しています。その代表的な取り組みが、「Social Impact Initiative(SII)」と呼ばれる戦略的プロボノ人材育成プログラムです。

このプログラムは、クライアント業務と並行して社会課題に向き合う経験を通じて、社員一人ひとりが「自らの専門性を社会に還元する」意識を高めることを目的としています。

参加コンサルタントは通常業務と並行して約半年間のプロボノプロジェクトを担当し、教育支援や子どもの貧困、気候変動、生物多様性、地域振興など多様なテーマに対して、団体の戦略設計や業務効率化、ロジックモデルの設計などを支援しています。

この自社プロボノ活動は、単なるCSR活動ではなく人材育成・組織文化の核として設計されており、参加者のエンゲージメント向上や専門性の深化を目的としています。アンケート結果によると、2020年12月時点から2023年6月時点にかけて、「社会課題を主体的に捉える社員」の割合が約36.5%から45.0%に上昇し、「行動に移している社員」も26.8%から32.7%へと増加し、組織全体の実践志向が高まっていることが示されています 。

参照:PwC Japan グループ「ソーシャルインパクト」

3.2 EYの「EY Ripples」にみる国際展開と企業一体型支援

EY Japan は、グローバルで展開する社会貢献プログラム「EY Ripples」を通じて、非営利団体やインパクト起業家との連携を自社文化に深く組み込んでいます。

このプログラムは 2018年に開始され、「2030年までに10億人にポジティブなインパクトを与える」という数値目標を掲げています。日本法人においても、非営利セクター支援や次世代人材育成、環境サステナビリティ推進など、複数のテーマに対して社員が自らの専門性を社会課題の解決に活かす機会を提供しています。

たとえば「Supporting the next generation workforce」では、STEM教育やキャリア教育の支援を通じて、若年層の可能性を引き出す活動が行われています。また、「Working with impact entrepreneurs」では、社会課題に取り組む起業家へのメンタリングやアクセラレータープログラムを提供し、社会的企業への伴走支援を行っています。

さらに、「Accelerating environmental sustainability」の領域では、市民科学プロジェクトへの参加や環境リテラシー向上のワークショップなど、環境分野での社会貢献活動も推進されています。

これらの活動を通じて、EY Japanでは支援先に向けた支援だけでなく、自社の社員自身が実践者として社会インパクトに関与できる構造が制度化されています。統合報告書などでも、こうした取り組みが「企業文化」や「価値観」として明示されており、転職希望者にとって「どんな組織文化の中で働くか」を判断する重要な材料になっています。

参照:EY Japan 「企業としての責任(CR)」EY Japan「統合報告書 2024ーCommunity」

3.3 アクセンチュアの環境KPI管理体制と"360°Value構想"

アクセンチュアは、単にクライアントを支援する立場にとどまらず、自らの企業運営においてSDGsやサステナビリティを実践する「実行者」としての姿勢を明確に示しています。

  • 2023年末に実現した「100%再生可能エネルギー調達」

    同社は、2019年にグローバルで「2023年末までに全拠点で100%再生可能エネルギーを調達する」との目標を設定しましたが、2023年末の時点で全拠点においてこの目標を達成したことを報告しています。。この達成は、同社が環境目標を単なる“掲げる目標”ではなく、C-suite が責任を持ち達成を管理する組織体制のもと実行していることを示唆しています。

  • サプライチェーン行動の透明性と責任性

    アクセンチュアは、重要サプライヤーのうち2025年末までに90%が自社環境目標を開示し、温室効果ガス削減の取り組みを公表する目標を掲げています。2023年末時点で89%のサプライヤーが目標開示、96%が削減アクションを公表しており、企業行動が実際のバリューチェーンにまで浸透している実績を持ちます。

  • ビジネスの中核に据えられた「360° Value」理念

    同社の経営ビジョン「360° Value」では、経済的価値と環境・社会的価値の両立を掲げており、持続可能な価値創造を経営の中心に置く企業姿勢が明文化されています。これは、単に外部支援を提供するにとどまらず、自ら実践を通じて経営概念を体現するという、支援者と実践者の両輪に立った企業文化の証です。

参照:Accenture “2024 CDP Climate Response Report”Accenture “360° Value Report 2024 - Delivering value from every angle”

3.4 野村総合研究所(NRI)の組織横断型マテリアリティ設計

野村総合研究所では、統合レポート2024(2024年3月期)において、SDGsを含むマテリアリティ(重要課題)を経営戦略とともに明示し、組織横断の体制で取り組みを進めていることが明記されています。

このレポートでは、以下のように自社内でのSDGs実践と制度化を打ち出しています:

  • マテリアリティとして「社会の安全・安心」「環境貢献」「知識循環」などSDGsと重なる領域を設定し、経営トップから具体策までを一体化した価値創造プロセスとしてブランド化

  • 「Value Co-Creation活動」を通じて、社員全体が社会課題を発見し、事業活動と結びつける思考を促進。ボトムアップの対話型組織文化を形成していることが強調されています

  • 自社ESGデータ提供サービス(NRI ESGデータ提供サービス)を2024年7月に提供開始し、自社のESG知見を他社と共有するインフラ化するなど、社会貢献の展開方向に制度設計をしている点も示されています

参照:野村総合研究所(NRI)「統合レポート2024」野村総合研究所(NRI)グループ「サステナビリティブックDream up the future. 未来創発2024」

4. 制度から行動へ──社員がSDGsに参加する企業文化とは

企業がどれだけSDGsに力を入れているかを見極める際、理念やスローガンではなく、社員一人ひとりの行動に落とし込まれているかどうかが重要な指標になります。特にコンサルティングファームのように、クライアントの変革を支援する立場にある組織では、自社内でのSDGs実践が説得力や信頼性の源になります。

4.1 プロボノが自発的に運用されているか

多くの企業がSDGsの一環としてプロボノ制度を導入していますが、制度の「有無」だけではその実効性は測れません。重要なのは、それが社員の自主性を後押しする形で“活用されている”かどうかです。

たとえば、業務時間中にプロボノ活動への参加が認められていたり、評価制度に組み込まれていたりするか。また、テーマ設定やチーム編成に現場の社員が裁量を持って関わっているか。こうした運用の柔軟性と継続性は、単なる制度設計を超えて、“文化として根づいているかどうか”を判断する手がかりになります。


4.2 社内外の共創型プロジェクトに社員がどう関わっているか

SDGsの実践は、社外向けのPRや方針説明だけでなく、組織内外での共創的な実践を通じて初めて文化として定着します。たとえば、NPOやスタートアップとの協働プロジェクト、社員提案型の社会貢献活動など、ファームによって多様な取り組みがあります。

こうした活動に社員がどう関わっているか──受け身で与えられた役割をこなすだけなのか、それともプロジェクトの設計段階から主体的に関わっているのか──を知ることは、その企業の風土や現場の温度感を知るうえで非常に有効です。「共創」は参加の質を映す鏡でもあります。

4.3 意識変容と評価制度の接点はあるか?

SDGsへの取り組みを通じて、社員の意識がどう変わり、それが組織全体の学習や成果にどうつながっているかを測るには、人事制度や評価指標との連動に注目する必要があります。

たとえば、サステナビリティに関する行動やプロジェクトへの関与が評価制度の一部になっているか、社内での表彰やキャリアパスにどのように反映されているか、といった点は、SDGsが“本気のテーマ”として扱われているかを見極める判断材料です。制度・文化・行動が一貫している企業は、社員の意識変容も組織の価値として捉えています。

5. まとめ──“実践する企業文化”に共感できるかがキャリアの軸になる

コンサルティングファームがSDGsにどう取り組んでいるかは、単なる理念の表明にとどまらず、制度設計や社員の行動にどのように結びついているかが重要な視点です。
本記事で紹介したように、理念→制度→行動という一連の流れが一貫して存在しているかどうかを見極めることで、企業の姿勢や文化の深さを理解することができます。

特に、プロボノや共創型プロジェクトへの参加機会、SDGs活動が評価制度にどのように組み込まれているかといった点は、「掲げているだけ」の企業と「実践が息づいている」企業との違いを浮き彫りにします。
こうした違いは、日々の働き方やキャリア形成に直結するものです。

SDGsへの共感を出発点としつつも、どのような組織で、どのような構造のもとで、どんな関わり方ができるのか──そうした視点を持って企業文化を見極めていくことが、納得感のあるキャリア選択へとつながっていくのではないでしょうか。

6. サステナビリティ領域での転職を考えるなら──「サスキャリ」の活用を

SDGsに本気で取り組む企業で働きたい方や、環境・社会・経済の課題に向き合うキャリアを志す方にとって、転職エージェント選びも大切な判断軸の一つです。

「サスキャリ」は、サステナビリティ・ESG・脱炭素・SDGsといった領域に特化した転職支援サービス。業界に精通したキャリアアドバイザーが、表面的な求人情報だけでなく、「その企業がどのようにSDGsに向き合っているか」「それがどのように制度や組織文化に表れているか」といった深い観点から、あなたに合った選択肢をご提案します。

どんな組織で、どのようなかたちで社会課題に関わりたいのか。そんな問いを大切にしながら、次の一歩を考えたい方は、ぜひ一度ご相談ください。

監修

サスキャリ編集部

サスキャリ編集部

サステナビリティ・ESG領域に特化した転職支援サービス「サスキャリ」を運営する編集チームです。業界動向やキャリアに役立つ情報を、専門的な視点からわかりやすく発信しています。

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